「犬用」と書いてあるシャンプーを、なんとなく選んでいませんか?
犬用シャンプーを選ぶとき、私が絶対に確認するのは2つだけです。
「全成分が公開されているか」と「人間の赤ちゃんにも使えるレベルの低刺激か」。
逆に言えば、この2つをクリアしていない製品は、どんなに評判が良くても仕入れません。
なぜこの2つなのか。順番にお話しします。
以前、犬の皮膚は人とほぼ同じ臓器という記事で、こんなことを書きました。
日本の薬機法では、ペット用シャンプーは「雑貨」扱い。人間用の化粧品と違って、全成分の表示義務がなく、配合上限の規制もありません。
だから「犬専用と書いてあれば安心」という発想は危険です。
そしてその記事の最後に、私はこう書きました。
「中身を見る目を持ってください」
でも、肝心の「見る目の育て方」をまだ書いていませんでした。
今回はそのお話をします。
私が自分のサロンで使うシャンプーを仕入れるとき、実際に何を確認しているか。
そして、飼い主さんが持ち込まれるシャンプーを見て「これは合っていないな」と思うのはどんなときか。
この記事を読んで、うちの子に合ったシャンプーを選ぶときの“見る目”に、役立ててください♪
まず前提:高い=いいシャンプー、ではありません
価格と品質は、そこまで比例しません。
高価格帯の製品には、香りや見た目の演出にコストがかかっているものもあります。逆に、成分がシンプルで手頃な価格の製品が、その子の皮膚には一番合っているということも普通にあります。
サロンで使うシャンプーは、何十頭も洗う消耗品なので価格は無視できません。それでも私が譲らない基準が、2つあります。
現役トリマーがシャンプーを仕入れる「2つの基準」
基準1:全成分を表示、または問い合わせに答えているか
これが一番目です。
前述の通り、ペット用シャンプーには全成分の表示義務がありません。つまり、書いていない成分が入っていても、法律上は問題がないということです。
だからこそ、義務がないのに全部書いているメーカーは、それだけで信頼に値します。
パッケージに全成分が書かれていなくても、公式サイトに記載していたり、問い合わせれば教えてくれるメーカーもあります。それも同じことです。
逆に、
- パッケージにも公式サイトにも成分の記載がない
- 問い合わせても「企業秘密です」と言われる
こういう製品は、私は仕入れません。
何が入っているか分からないものを、何十頭もの犬の皮膚に使うことはできないからです。
これは飼い主さんにもそのまま使える基準です。買う前に、パッケージの裏と、メーカーの公式サイトを見てください。全成分が公開されているかどうか。それだけで、選択肢はかなり絞られます。

基準2:人間の赤ちゃんにも使えるくらいの低刺激か
2つ目の基準は、これです。
誤解のないように補足しますと、「人間用シャンプーを犬に使っていい」という意味ではありません。
以前の記事で書いた通り、人の皮膚は弱酸性(pH 4.5〜6.0)、犬は中性〜弱アルカリ性(pH 7.4〜8.5)です。人間用シャンプーをそのまま犬に使えば、犬本来のpHバランスは崩れます。それは別の話です。
それに人間用シャンプーに含まれるトリートメント成分や油分は、犬の被毛には合いません。
特に油分が多い製品は、犬の皮膚や被毛にべたつきを引き起こし、かえって皮膚トラブルの原因になることもあります。
私が言いたいのは、刺激の強さの目安として使えるということ。
考えてみてください。
人間が素手で触れないような洗剤で、犬を洗うのはおかしいですよね。犬の表皮は、人間の約3分の1の薄さです。人が「ちょっとピリッとするな」と感じる刺激は、犬にとってはもっと強い刺激になり得ます。
人間に使えないものを、人間より皮膚の薄い生き物に使う。
この矛盾に気づくと、選び方が変わります。
成分表で見つけたら避けているもの
1. 脱脂力の強すぎる界面活性剤
ラウリル硫酸Na、ラウレス硫酸Naなどです。洗浄力が強く、必要な皮脂まで奪ってしまうことがあります。
ちなみに、よく「石油系界面活性剤は避けましょう」と言われますよね。でも実はそう呼ばれている成分の多くは、現在ヤシ油などの植物から原料が作られています。
そう、「石油系」という言葉に明確な定義はありません。
製法をたどると、同じ成分でも植物由来にも石油由来にもなり得る。
つまり、原料の由来で刺激の強さは決まらないということです。
大事なのは、原料が何かではなく、その子の皮膚に対して脱脂力が強すぎないか。
「天然由来だから安全」も、「石油系だから危険」も、どちらも成分表を見る目としては不正確です。イメージではなく、実際にどう作用するかで判断してください。
2. 人工着色料
はっきり言ってしまうと、犬にとっては何の意味もない成分です。
シャンプーがピンク色でも青色でも、犬には関係ありません。あれは人間が「かわいい」と思うためのものです。
意味のない成分のために、皮膚が刺激を受ける理由はありません。
ちなみに、白い毛用のシャンプーには青い色がついていることが多いです。青い色のほうが黄ばみを薄め、より白く洗えて、白く仕上がっているように“見える”からです(笑)
3. 強い合成香料
ただし、これは程度の問題です。
香料をゼロにした、完全に無臭のシャンプー。あれはお客様の受けが本当に悪いです(笑)
トリミングから帰ってきた愛犬が、ふわっといい香りがする。
これを楽しみにしている飼い主さんは、本当に多いんです。
それに香りがないと、本当に洗ったのか?という証明にもなりませんしね。
だから私も、香りを全否定はしません。
大事なのは、強い合成香料でごまかしていないかということ。ほのかに香る程度と、鼻にツンとくるような強い香りは、まったく別物です。
洗い上がりに部屋中が匂うようなシャンプーは、
その分だけ何かが強く入っていると考えていいと思います。
もちろん、華やかなほど香りが強いほうが好き、という方もいらっしゃるので香料=全部だめ、ではないです。
ちなみに、成分表は原則として配合量の多い順に書かれています。
同じ成分でも、リストの上の方にあるか下の方にあるかで、意味が変わってきます。
サロンで「あえて使わない」シャンプー

複数のハーブが入った製品
これはあまり言われないかもしれないのですが…
ハーブ配合、植物エキス配合。こういう製品は「体に優しそう」なイメージがあります。実際、悪いものではありません。
でも、私のサロンでは使っていません。ハーブパックのようなメニューも置いていません。
理由はひとつです。
アレルギー反応が出たとき、どのハーブが原因か分からなくなるから。
5種類、10種類のハーブが入った製品を使って、その子が痒がったとする。原因を特定するには、ひとつずつ試して確かめるしかありません。犬に、そして私も(笑)そんな負担と時間はかけられません。
天然由来だから安全、ということはありません。植物にアレルギーを起こす犬は普通にいます。
以前、ご自宅でティーツリーのシャンプーを使っていた子が、ある日突然アレルギーを起こすようになりました。しかし、そのシャンプーには複数のハーブオイルが入っているので、結局どのオイルにアレルギーを起こしているのか分からずじまい…なんてことがありました。
だから私は、成分がシンプルで、何かあったときに原因を追いやすい製品を選んでいます。
これは「ハーブが悪い」という話ではなく、トラブルが起きたときに対処できるかどうかという選び方の話です。
まとめ:シャンプーの「見る目」の育て方
まとめると、
買う前に確認すること
- 全成分が公開されているか(パッケージ・公式サイト・問い合わせ)
- 人が素手で触れないようなものではないか
- 脱脂力の強い界面活性剤、人工着色料、強い合成香料が上位に来ていないか
- ハーブや植物エキスが大量に入っていないか
気にしなくていいこと
- 価格の高さ
- 「石油系不使用」「天然由来」といったイメージ表記
- パッケージのかわいさ、色
【次のステップ】成分名が読めるようになると、もっと楽になります
ここまで「脱脂力の強い界面活性剤は避ける」と書いてきましたが、実際に成分表を見たとき、どれがそれなのか分からないと思います。
ラウロイルアスパラギン酸Na
コカミドプロピルベタイン
ラウレス硫酸Na
この3つ、どれが優しくて、どれが強いか。見分けられますか。
実は、名前の一部を見るだけで判断できます。そして見る場所も、成分表の上から4行だけで足ります。
➡ 犬用シャンプーの成分表、上から4行だけ読めばいい|洗浄成分5種類の見分け方
【実践編】この基準をクリアしたシャンプーは?
「じゃあ具体的にどれを買えばいいの?」と思われたかもしれません。
おすすめのシャンプーは別の記事にまとめています。
理由は単純で、皮膚のタイプによって「正解」が変わるからです。乾燥肌の子と脂性肌の子では、選ぶべきシャンプーがまったく違います。
実際に私が選んだシャンプーを紹介しています。それぞれのデメリットも正直に書きました。
➡ 【現役トリマー厳選】犬用シャンプーおすすめ|皮膚タイプ別に、選んだ理由とデメリットまで
おまけ:よくある誤解
ここからは、当てはまる方だけ読んでいただければ大丈夫です。
サロンでよく見かける、2つの誤解について書いておきます。
ホームセンターのノミ取りシャンプー
はっきり言います。
ノミ取りシャンプーで、ノミの予防はできない。
洗っている間に付いているノミに作用しても、洗い流した時点で効果は終わります。
翌日また外に出れば、同じことです。
現在のノミ・マダニ対策の主流は、動物病院で処方される滴下タイプや経口タイプの予防薬です。
効果が持続し、駆除だけでなく予防ができます。
そして、ノミ取りシャンプーには殺虫成分が入っています。効果が一時的なものに、皮膚の薄い犬が刺激を受ける。割に合いません。
ノミが気になるなら、シャンプーではなく、動物病院で相談してください。
症状がないのに使う「薬用シャンプー」
これも、よく見かける誤解です。
動物病院で薬用シャンプーを買って、持ち込まれる方がいます。皮膚炎の治療中なら、まったく問題ありません。
問題は、症状が何もないのに使っているケースです。
「薬用と書いてあるから、肌にいいと思って」
「予防のために使っています」
薬用シャンプーは、特定の症状に対処するためのものです。
抗菌成分や角質溶解成分が入っているものもあり、症状のない健康な皮膚に使い続ければ、必要な常在菌や皮脂まで奪ってしまう可能性があります。
薬は症状があるから飲むものですよね。
何ともないのに毎日飲む人はいません。シャンプーも同じです。
処方されたときの症状が治まったなら、そのまま使い続けるのではなく、一度かかりつけの獣医師に確認してください。「もう普通のシャンプーに戻していいですか」と聞くだけです。
シャンプー選びで一番大事なのは、実は「どれが正解か」ではありません。
その子の皮膚を見て、合っているかどうかを判断できるようになることです。
同じシャンプーでも、合う子と合わない子がいます。季節によって変わることもあります。
だからこそ、「犬用と書いてあるから大丈夫」で止まらず、中身を見る習慣をつけてほしいんです。
その目は、シャンプーだけでなく、これから先その子に使うすべてのものを選ぶときに役立ちます。
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